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取り組み

リウマチ専門外来

リウマチ専門外来の特徴

全身の関節や筋肉などに痛みやこわばりを来すリウマチ性疾患の診断・治療を行なっています。リウマチ性疾患には幅広い疾患が含まれますが、その中でも免疫異常・炎症制御異常を伴ったリウマチ性疾患の代表的疾患である関節リウマチの診療を主として行なっています。
関節リウマチは、関節を主座とした全身性炎症を来す疾患で、日本では約70万人(成人の約1%)の方が罹患しているといわれています。初期には関節の痛みや腫れ、こわばりで発症し、放置すると炎症により徐々に関節構造が破壊され、関節に変形を来し、身体の機能が障害され就労や日常生活が困難になるとともに、内臓にも障害を来し、寿命を短くしうる疾患です。
病気の診断には、主に触診による関節の炎症所見(腫れや圧痛)の検出が最も重要です。
また血液検査で抗CCP抗体やリウマチ因子、炎症反応陽性、6週間以上症状が持続していることの有無と併せて診断します。また関節破壊については、通常行なうレントゲン検査による評価に加えて、必要に応じて超音波やMRI検査によってより詳細な評価を実施しています。(図1)

愛知医科大学名誉教授:三井医師

愛知医科大学名誉教授:三井医師

図1

PDUS画像

PDUS画像

MRI造影画像

MRI造影画像

最近では関節リウマチの関節破壊は発症後早期から急速に起こることが明らかになりました。
一旦、関節構造の破壊が進行してしまうと、関節を元の状態に戻すことは困難なため、破壊が進む前に、しっかりと炎症を抑えることが治療の成功のカギとなります。そのため早期発見と適切な治療が極めて重要です。

1.薬物療法

関節リウマチ治療において中心的な役割を担う治療法です。近年、関節リウマチの炎症制御に極めて有効な治療薬(メトトレキサートなどの合成抗リウマチ薬、生物学的抗リウマチ薬など)が登場し、治療成績は飛躍的に向上しました。
現在の治療目標は、ほとんど症状のない状態、関節破壊が進まない状態(いわゆる寛解)を目指し維持するように治療を行なっています。(図2)

図2

図2

このような治療方針は「目標達成に向けた治療(treat-to-target)、T2Tと言われています。

(1)リウマチ薬(DMARDs)

合成DMARDSs(疾患修飾性抗リウマチ薬、DMARDs)(表1)
関節リウマチの自然経過を変えうる薬剤、すなわち関節破壊抑制効果を有する薬剤の総称で、関節リウマチと診断がつけば早期より使用されます。

表1:現在わが国で使用されている合成DMARD

薬剤 主な商品名 作用 推奨度 注意すべき副作用
免疫調節薬 サラゾスル
ファピリジン
アザルフィジンEN A 皮疹
ブシラミン リマチル B 皮疹、蛋白尿
金チオリンゴ酸
ナトリウム
シオゾール B 皮疹、蛋白尿
メトトレキサート リウマトレックス
メトレート
A 間質性肺炎、骨髄障害、肝障害
タクロリムス プログラフ B 肝障害、高血圧、耐糖能異常
免疫抑制薬 イグラチモド ケアラム
コルベット
B 肝障害、胃腸障害、皮膚・皮下組織障害
レフルノミド アラバ B 肝障害、骨髄障害、下痢、感染症、間質性肺炎
トファシチニブ ゼルヤンツ   感染症(副鼻腔炎、咽頭炎、気管支炎、帯状疱疹)、消化管障害

日本リウマチ学会:関節リウマチ診療ガイドライン 2014引用

効果発現には数週間以上の時間がかかります。中でもメトトレキサート(MTX)はその高い有効性から、関節リウマチ治療の中心的な薬剤として用いられています。
2011年2月より投与量の上限が16mg/週まで投与可能となり、早期から十分な量を使用ることが推奨されています。
2013年より新しいDMARDsとしてJAK阻害薬が登場し、注目されています。細胞内でのシグナル伝達を阻害し生物学的製剤と異なり特定のサイトカインだけでなく、種々のサイトカインシグナルを抑制することにより効果を発揮すると考えられています。

生物学的抗リウマチ薬(Biological DMARDs)

炎症性サイトカインのTNFα、IL-1、IL-6やT細胞などを標的として炎症を抑え関節破壊の進行を抑制することが可能です。通常MTXと併用して使用されることが多いです。従来の合成DMARDsに比して優れた治療効果を示し、関節破壊抑制効果も証明されています。しかしながら高額な薬価や感染症などの重篤な副作用も問題視されています。現在、日本で使用できる生物学的製剤は7剤あり、それらの概要を表にしました。(表2)

表2(クリックで拡大)

表2

関節リウマチなどの関節炎疾患の早期診断・積極的治療に取り組み、上記の目標を多数の患者さんで達成しています。上記目標の達成には、高価な生物学的抗リウマチ薬の併用が必要とする方もおられますが、しっかりと病気の勢いを抑えることにより生物学的抗リウマチ薬を休薬し、より安価な治療薬での寛解維持を目指して治療に取り組んでいます。

(2)ステロイド(副腎皮質ホルモン)

全身的なステロイドの投与は強力な抗炎症効果があり、血管炎の合併や、多剤抵抗性で活動性の高い関節リウマチに対して抗リウマチ剤の補助として用いられます。
長期投与すると糖尿病、白内障、胃潰瘍、感染症などを合併しやすくなるので短期の使用に留める必要があります。特に骨粗しょう症には注意を要します。骨粗しょう症の治療薬として、ビスホスホネートは骨のハイドロキシアパタイトと結合し、破骨細胞に働いて骨のカルシウムが血中に溶け出すのを防ぎます。骨形成を促進する副甲状腺ホルモン製剤も骨密度を増加させます。
最近登場した抗RANKL抗体(プラリア)は破骨細胞表面にあるRANKに結合してRANKL受容体の活性化を防ぎ骨破壊を減少させると言われています。

(3)非ステロイド系抗炎症薬(消炎鎮痛剤、NSAIDs)

疼痛や炎症を誘発するプロスタグランジンを抑えて効果を発揮します。鎮痛効果に即効性はありますが、関節リウマチの進行抑制や関節破壊を遅延することはできません。
近年COX-2を選択的に阻害するNSAIDsが開発され、副作用である胃、十二指腸潰瘍の発生を軽減させることが証明されました。

2.外科的療法

薬物療法の目的に到達してもなお股、膝、肘、手、足などの関節破壊が進行して疼痛や変形などの障害が残る場合があります。
このような患者さんには外科的療法を行なっています。この療法には、鏡視下滑膜切除術,関節形成術,人工関節置換術(図3),関節固定術などがあります。

図3:人工膝関節置換術のX線写真(CR、DR)

術前

術前

術後

術後

少数の関節に痛みや変形がある場合、侵襲の少ない関節鏡視下での滑膜切除が有効です。膝、肘、手指、手関節などに適応があります。
また、股、膝、肘関節の疼痛や変形によって歩行をはじめとする日常生活動作に支障をきたす場合には人工関節置換術を行なっています。 頸椎、足関節(後足部、中足部)、手、手指関節の疼痛、変形、不安定に対しては関節固定術も有効な手術です。
患者さんは身体の機能に関して高い治療目標を持っておられますが、関節破壊が進行して起こる身体の変形や拘縮に対してこれを整える整容面にもさらに高い治療目標を持ち、改善に期待しておられます。
このために手指では滑膜切除と軟部組織のバランス再建によって変形も改善し、物を把握する力の増強も期待できます。また、前足部変形に対しては、中足骨の骨切短縮によって関節を温存し、踏切力も増強、小走りも可能となる手術もあります。
これらの手術は言うまでもなく適応とタイミングが最も重要です。

3.リハビリテ-ション

関節リウマチに対するリハビリテーションは、関節の動きが悪くなることや痛み、筋力低下によって起きてくる仕事や日常生活の支障をできるだけ少なくしていくことが目的です。
関節リウマチの治療には、薬物療法や手術などがありますが、これらと併用してリハビリテーションを行なっていくことで、よりよい日常生活を送れるようにすることを目指していきます。
当院では医師の指示のもと、理学療法士による理学療法(物理療法、運動療法)と、義肢装具士による装具療法を受けることができます。
物理療法(ホットパックや低周波療法など)は、血液の循環を良くしたり、筋肉の緊張をほぐしたりすることで、関節の痛みや腫れを軽減させるものです。運動療法は、筋力の低下を予防し、関節の動きが悪くならないように、あるいは改善するために行ないます。運動療法には、理学療法士に手伝ってもらいながら行なうものや、患者さんご自身で行なう体操などがあります。また日常生活において、関節の変形の予防や、体力を消耗しすぎない方法を患者さんと一緒に考えていきます。
装具療法では、不安定な関節を安定させたり、関節の変形を予防したりすることを目的に、サポーターや装具、あるいは足底坂(インソール)などが処方されます。

当院では、疼痛、腫脹やリウマチ肺、血管炎などの関節外症状の改善(臨床的寛解)、また、変形や関節破壊などの改善(構造的寛解)、そして日常生活動作の改善(機能的寛解)により生活の質の向上を患者さんと共に目指して、内科的薬物療法、外科的療法、リハビリテーションなど集学的に治療を行なっております。

当クリニックのリウマチ専門外来は、毎週火曜日および金曜日の午前中に予約制で開かれています。担当は下記の医師です。

担当医師 専門分野 担当日
三井 忠夫 愛知医科大学名誉教授 リウマチ科、関節外科 金曜日
難波 大夫 名古屋市立大学病院 
呼吸器・アレルギー・リウマチ内科
関節リウマチなど
膠原病の診断・薬物療法
火曜日

当クリニックの火曜日のリウマチ専門外来に通院中の患者さんへ

「関節リウマチ治療成績に関する多施設共同コホート研究」診療情報の研究利用について

名古屋市立大学病院 呼吸器・アレルギー・リウマチ内科では、関節リウマチの診療情報を用いた研究を行なっており、当クリニックの火曜日のリウマチ専門外来に通院中の関節リウマチなど関節炎患者さんの診療情報も上記研究に利用させて頂いております。調査項目は、診療録に記載されている年齢、性別、臨床症状、検査データ、治療方法、経過などです。この調査項目はすべて既存のデータのみであり、データ上すべての患者さんは匿名化され、お名前、住所などプライバシーに関する情報が外部に漏れることは一切なく、何らかの負担が生じることもありませんのでご安心下さい。調査したデータは、名古屋市立大学大学院医学研究科 呼吸器・免疫アレルギー内科学にて集計し解析を行ないます。解析後のデータは破棄されます。また、今回の研究で得られた結果に関しては、医学的な専門学会や専門雑誌などで報告されることがあります。
本研究の調査対象の患者さんで調査に同意されない方やこの件に関しまして、ご質問などがございましたら、下記研究責任者に遠慮なくお申し出下さい。

 

名古屋市立大学病院 呼吸器・アレルギー・リウマチ内科
名古屋市立大学大学院医学研究科 呼吸器・免疫アレルギー内科学
難波 大夫
E-mail: tnaniwa@med.nagoya-cu.ac.jp
FAX: 052-852-0849

難波 大夫

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